育成枠から帰ってきた男【コラム】
桜が満開となった4月3日の仙台。
例年よりも10日ほど、早い満開宣言となったようだ。
春の陽気が漂うなか、と思いきや、強い風が吹き荒れる楽天生命パークで
それぞれマウンドにあがった。
弓削は立ち上がりから、制球に苦しみながらも
持ち前の打ち取るピッチングで粘る。
一方、山岡は3人でピシャリ。
ところが、コンディションの調整不足からか、2回に突然くずれる。
4番浅村、5番茂木に連続四球。
ノーアウト1,2塁にすると6番鈴木には
146km/hのストレートをライト前にはじき返され、難なく先制点を許した。
ノーアウト1,3塁の場面で7番渡邊佳にも
145km/hのストレートをライト前に痛打、これで2点目を献上。
後続に対しては苦しみながらも、山岡が踏ん張りをみせて追加点を許さず
このイニングを0-2で終える。
立ち直りが期待された3回の山岡。
この回の先頭打者・小深田を打ち取るものの
3番島内、4番浅村、5番茂木に連続四球で1アウト満塁のチャンスを与えてしまう。
このピンチは6番鈴木のセカンドゴロの間の1点のみで凌ぐ。
傷口を大きくしないあたりは
さすがオリックスの大車輪の1つと称される山岡なのかもしれないが
3回までに与えた四球が5つ、4回には2四死球で合計7四死球のご乱調。
ここで、静かに見守っていた中島監督は山岡をあきらめて
ピッチャー交代を告げる。
5回、オリックスのマウンドにあがったのは竹安。
投球が安定せず、浅村と茂木に連続四球。
7回にはベテラン能見が継投に入ったが
山岡と竹安に負けじと、浅村と茂木に四球。
11個の四死球がオリックスから楽天にプレゼントされたわけだが
桜全開の仙台のようには、花開かないのが現在の石井楽天。
ドヨーンとしたゲーム展開で、目を引いたのは背番号45のサウスポー
渡邊佑樹だ。
8回、吉田の強烈なピッチャー返しをまともに受け
酒居がまさかのアクシデント降板。
この場面で、石井監督から「がんばってね」と託されたのが
この男、渡邊佑樹だ。
こんな二枚目がいたのかと驚くほどのイケメンぶり。
さっそく選手名鑑で調べたら、ちゃんといた。
渡邊佑樹は2017年に横浜商科大からドラ4で楽天に入団。
成績は2019年に1イニングの登板しかないのだが、内容がやばい。
なぜ、もっと起用しなかったのか。
育成契約となった渡邊は腐らず、努力の末、支配下枠に帰ってきた。
いや、帰ってきてくれたのだ。
さてさて、試合は3-2でリードはしているものの
追いつかれたら、つぼみの楽天打線はバンザイしてしまう展開。
自らのの死球もあり、1死2,3塁の絶体絶命の状況。
石井監督は腕組みのまま、動かない。
渡邊は表情を崩さずバッターに向かう。
一人目、当たっている6番中川をピッチャーゴロ。
二人目、仕事人安達を得意のシンカーで空振り三振。
結局、反撃ムード高まるオリックス打線を無得点に抑え
最後は二枚目らしく、小さなガッツポーズでマウンドを下りる。
試合後、「これから成長する彼のために、マウンドに立たせ続けた」
とのコメントは、これまで登板機会のなかったサウスポーに目を付けた
眼力を持つ石井監督のもの。
背番号45、渡邊佑樹25才はこれからもきっとやってくれるはず。
そして、楽天打線の早めの全開も期待してますよ、と。
そしてそして、あの場面で石井監督、フリーズしていたのではなくて、安心しました。